◆ No title ◆

帰寮すると先に帰っていたヨウトーストレイト先輩から声をかけられる。
「リーちゃん、机のノートパソコン、蓋は閉めてあるけどどうも電源入ってるっぽくない？」と。

何年ぶりに『リーちゃん』などと呼ばれたか。記憶にある限りの最終は、保育所の卒業式の日、保育士の先生の声。
小学生からは全寮制私立学校の寄宿舎で住み暮らした。そこでは私は『クラウディセオリー』だった。『リーちゃん』は存在を消したはずだった。
その７年ぶりの『リーちゃん』を、私はまだ、まっすぐ受け入れるのが難しいようだ。

(2024.05.16 20:15追記)
ヨウトーストレイト先輩に『リーちゃん』と呼ばれることを止めるつもりはない。強制されたわけでもなく『リーちゃん』が戻ってきたということは、つまり、そういう場所なのだから。
そしてむしろ、『リーちゃん』との同居に、私はほのかな居心地の良さを感じているから。