◆ 入学式臨席 ◆
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本日、東京都府中市の日本トレーニングセンター学園の講堂において、午前9時より入学式に中等部入学生として臨席。重厚な講堂に大勢のウマ娘が集結していて、これが皆、日本の津々浦々からその脚に期待を背負って集った子達なんだと実感。私なんかがこの子達に対抗できるのか不安がよぎる。……いや、不安なのは向こうも同じだと信じたいが……。
式は円滑に進行。在校生代表からのスピーチ、式次第には高等部3年のペリドットグリーン先輩と記載あり。記憶にある名前だと思ったが、姿を見て記憶と符合する。昨年末、季節外れの冬将軍が居座る中山レース場で開催のステイヤーズステークス、平地最長距離3600mのレースで、まったくペースを緩めず序盤より後方から前走者を苦しめるという大番狂わせで皆を追込み、残り1200m付近からスタミナを使い果たし次々に脱落するメンバーを易々と躱して大差で、しかも3分41秒6のワールドレコードタイを叩き出したあのステイヤークイーン……。
先輩は眩しそうに壇上から講堂の様子を見回すと、深々と辞儀しスピーチ。原稿の読み上げではなく、また、声と併用し手話と思われる手の動きもある。そういえば今年度は、蹄鉄その他装具の製造調整・修理やトレーニングの補助並びにトレーナー補佐を履修するサポート科に聴覚障害のウマ娘が1名入学していると聞いたが、そのためか。
いや、おそらくそれだけではない。先輩のスピーチは、耳が聞こえないというハンディを不幸と思っていない、そればかりかまるで……そう、聞こえないことを楽しんでいるかのように入学生に語りかけている。それは決して、その聴覚障害のウマ娘1人に向けてのみの語りかけとは思えなかった。
今の私にはそのスピーチに理解が及ばない。しかし、聞こえないことを楽しみにすら変えている先輩がいる。聞こえなくても、紛れもなくこの先輩は去年の3600の覇者であり、負け犬が吠えているわけではないのだ。……いつか理解が及ぶ日が来ることを切に願う。
寮は美浦寮。今日から同居する寮生は1学年上のヨウトーストレイト先輩。短髪に清潔感という化粧をした裏表のなさそうな人。気さくに握手を求めてきたため困惑するも、1秒ほどの間を置いて右手を差し出す。握られた手は、少し冷たかった。
寮内共用ロビーで歓迎会。部屋の隅にあのペリドットグリーン先輩の姿を認める。昼の大任で疲れたのか、座ったままで船を漕いでいる様子。近くで姿を拝見しても華奢で、この身体のどこに、平地最長3600mで世界に比肩する記録を打ち立てたスタミナが宿っているのか、わからない。
20:25散会。後片付けは在校生の仕事だからと新入生は共用浴場の一番風呂を提供される。広い湯船に身を任せると吐息に声が乗りそうになる。水面に映る天井灯が揺れ、知らぬ間に今日という日が私の中で柔らかくほどけていくようだった。
少々長湯してしまい足下がふらつく。軽度の湯あたり。明日以降、留意が必要。
これから6年のここでの生活。どこまでできるか不安だが、頑張ろう。
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